| 2025年9月29日(月)開始 2025年10月4日(土)読了 |
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作品情報
| タイトル |
世界でいちばん透きとおった物語 |
| 著者 |
杉井光 |
| シリーズ |
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| 初刊出版社 |
新潮社 |
| レーベル |
新潮文庫nex |
| 発売日 |
2023年4月26日 |
| 初刊発行日 |
2023年5月1日 |
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書籍情報
| 出版社 |
新潮社 |
| レーベル |
新潮文庫nex す-31-2 |
| 判型/ページ数 |
文庫判/240ページ |
| 発売日 |
2023年4月26日 |
| 初版発行日 |
2023年5月1日 |
| 版数 |
第26刷 |
| 発行日 |
2025年5月20日 |
| 定価(本体) |
780円 |
| 購入日 |
2025年8月6日 |
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【あらすじ】
大御所ミステリ作家の宮内彰吾が死去した。宮内は妻帯者ながら多くの女性と交際し、そのうちの一人と子供までつくっていた。それが僕だ。「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」宮内の長男からの連絡をきっかけに始まった遺稿探し。編集者の霧子さんの助言をもとに調べるのだが・・・ |
【感想】
「電子書籍化絶対不可能」、「ネタバレ厳禁」という帯の記述に興味を持った作品です。タイトルからは、透明感があって心があらわれるような感動的な物語だと思いましたが、予想していた内容とは全く異なる凄い作品でした。
会ったこともなかった父親であるミステリ作家・宮内彰吾が死ぬ前に書こうとしていた小説のタイトルが「世界でいちばん透きとおった物語」ということであり、愛人の息子であった藤坂燈真が、その小説の原稿をいろんな関係者に会って話を聞きながら探し出すという内容でした。
その過程で、自分の母親を捨てた父親への憎しみや死への無関心さが変化していきます。最初は宮内の長男・松方朋晃からの依頼で探していただけの遺稿に対しても、父が何を書こうとしていたのか興味を惹かれていきます。宮内彰吾はひどい男であり父親だった事実も明らかになってきますが、それとともに、不器用な中に憎めない優しさや可愛らしさも見えてきます。
そして、最後にその小説は誰のためだったのかがわかり、透き通っているという意味も明らかになります。それはまったくの予想外の展開で、たぶん読者は一人として予想できなかったのではないかと思うくらい意外性のある結末でした。この小説自体が、宮内彰吾のアイデアで書かれた「世界でいちばん透きとおった物語」であったわけです。
そのアイデアは、紙の書物を読むことに難点のある人のためのアイデアであり、それは書くことは並大抵のことではない難しいことだとわかります。宮内彰吾がそこまでしてその人のために書き上げたかったということで、その人に対する強い愛情が伝わってきます。そのことがわかったからこそ、息子である燈真によってそのアイデアを受け継いで書かれた作品が本作品ということなのです。
この今読んでいる作品がそのアイデアで書かれたということは・・・と思ってあらためてこの作品の各ページを眺めてみると、驚きの事実がわかります。まさに空欄の部分はどのページでも透きとおっているのです。すべてのページでこの仕掛けを成立させるにはとてつもない時間と労力が必要だったのではないかと想像すると、物語の素晴らしさ・違和感の無さと、このアイデアを両立させていることに驚嘆してしまいます。そして、最終ページの「 」の中身、父親が透かそうとしていた五文字が目を凝らさと浮き上がってきます。素晴らしい演出です。ただ、欲を言えば最終ページの次のページ(あとがき)も、できれば他のページと同じルールで書いてもらって、最終ページも「透きとおった」ページになっていればなぁ思いました。
物語の面白さと予想できない展開、そして読後に気づく仕掛け、期待と予想とはまったく異なっていた作品でしたが、それ以上に楽しめて驚く素晴らしい作品でした。 |
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。 |
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