2025年7月22日(火)開始 2025年9月4日(木)読了
作品情報
タイトル 今夜、君が眠りに落ちるまで
著者 いぬじゅん
シリーズ
初刊出版社 PHP研究所
レーベル
初刊発行日 2025年6月19日
書籍情報
出版社 PHP研究所
レーベル PHP文芸文庫 い-11-3
判型/ページ数 文庫判/336ページ
初版発行日 2025年6月19日
版数 第1版第1刷
発行日 2025年6月19日
定価(本体) 850円
購入日 2025年6月20日
【あらすじ】
セクハラと長時間労働に苦しむ若林茜音が残業帰りに出会ったのは、不愛想ながらも思いやりに満ちた美形の店主がフクロウと営む「夜喫茶」。訪れるのは、熟年離婚の瀬戸際に立つ夫、離婚した両親との関係に葛藤する女子中学生、婚約者にフラれた青年ら、悩みを抱えて眠れぬ人ばかり。荒んだ客の心に寄り添いつつ、姿を消した恋人を待ち続ける一途な店主と、彼に救われた客たちが紡ぐ、優しさに溢れた恋物語。

詳細は下記の通り。
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第一章 眠れぬ街の住民たち
若林茜音
上司のパワハラとセクハラと長時間労働に苦しむ若林茜音。残業帰りの4月のある夜に茜音は古びた商店街の一角に、オレンジ色の照明の喫茶店を見つける。そこには不愛想な店主・弦間斗羽、常連の竹家花、峰岸正義がいた。眠れない人のために夜にしか営業していないその喫茶店に何度か訪れて斗羽に接するうちに、茜音は斗羽の「たかが仕事と思えばいい。心が壊れるのを阻止できるのは自分しかいない」という言葉である行動を決心する・・・
第二章 花火のように散る前に
三石武士
三石武士は若林茜音の親友・実玖の父親で57歳。実玖も茜音とともにブラックな企業をやめ、恋人・新藤拓弥と暮らすために家を出ることにした。それを機会に武士は妻・千穂から離婚を切り出される。残業帰りの梅雨明けのある夜に、古びた商店街で鳥のイラストのある喫茶店を訪れたが、ぶっきらぼうな店主に驚く。店主の斗羽は、眠れない人のための手伝いしかしないと言う。武士は、別居している正義の話や、斗羽の出て行った恋人の話を聞くうちに、思いはちゃんと言葉にしないといけないということに気づいていく・・・
第三章 家族のかたち
葉唯璃乃
葉唯璃乃は高校2年生、中学1年生の時に若林茜音が家庭教師をしていた。両親が離婚をして父親と暮らしている。本当は母親についていきたかったが、親の顔色をみて父親についていったことを、母親にも父親にも悪かったのではないかと自分を責めている。学校帰りに偶然街で出会った茜音にフクロウがいる喫茶店を教えてもらう。10月末の母親との面会後、その喫茶店を訪れて斗羽と出会う。自分を責めているのは両親への怒りを自分の責任に置き変えている、怒りを溶かしていこうと斗羽に言われる。斗羽や正義の娘・彩恵の話を聞くうちに、両親の思いを知り、怒りは溶けていく・・・
第四章 君に逢うまでのプロローグ
井谷健吾
井谷健吾は、クリスマスイヴの夜に結婚を約束していた梨沙から別れを告げられる。傷心の健吾は、かつて行ったことのある「スナック彩恵」に行こうとして、オレンジ色の光の喫茶店「夜喫茶 逢」を訪れる。斗羽は、健吾の事情を推理で当ててしまう。それは斗羽も同じような境遇だったから。斗羽と話をするうちに、健吾は梨沙の心が離れて行った理由を理解していく。健吾や常連の茜音たちは、そこで斗羽と斗羽の恋人・莉津菜との事情を知る。茜音は、元推理研究会にいた健吾を中心に、武士、璃乃、正義、彩恵、依里絵、花たちを巻き込んで、斗羽と莉津菜を再会させようと奔走する・・・
【感想】
病院などで待ち時間を利用して少しずつ読んだので、読み終わるまで1ヶ月以上もかかってしまいました。

眠れない客と眠れるように手助けをする店主・斗羽との春、夏、秋、冬の4つの物語です。登場人物は繋がっていき、第四章の斗羽と莉津菜の再開の話に向っていきます。いぬじゅんの作品らしく、それぞれの眠れない人物の話の結末は、心優しい結末となっています。涙あふれるということはありませんが、仕事や家族や恋人などの関係や接し方をあらためて考えさせてくれました。

各章のポイントは、
第一章では、仕事やハラスメントと自分へのストレスとの付き合い方、仕事の価値観
第二章では、夫としての妻や子供への思いの伝え方
第三章では、正解の無い人生の難しい選択における後悔、それに対する怒りや自責の念の処理の仕方
第四章では、相手を思う気持ちのすれ違いや、大事にすべきこと
ということだと思いますが、全体を通してわかることは、自分の思いは言葉にして話さないと相手に伝わらないし、誤解がどうしても生じてしまうということです。言葉にしない思いやりは、時にして正反対の感情を相手に感じさせることもあります。思いを言葉にしないことは、知らず知らずの間に自分を責めたり傷つけたりしてしまいます。そんなことを4つの優しい物語であらためて気づかせてくれる、素敵な作品でした。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。