2025年7月16日(水)開始 2025年7月17日(木)読了
作品情報
タイトル あなたのゼイ肉、落とします
著者 垣谷美雨
シリーズ
初刊出版社 双葉社
レーベル
初刊発行日 2016年10月19日
書籍情報
出版社 双葉社
レーベル 双葉文庫 か-36-07
判型/ページ数 文庫判/320ページ
初版発行日 2019年11月17日
版数 第18刷
発行日 2024年3月29日
定価(本体) 650円
購入日 2025年6月6日
【あらすじ】
ダイエットは運動と食事制限だけではない。大庭小萬里はマスコミには一切登場しない謎の女性だが、彼女の個別指導を受ければ、誰もが痩せられるという。どうやら、身体だけでなく「心のゼイ肉」を落とすことも大事なようだ。身も心も軽くなる、読んで痩せるダイエット小説4編。

詳細は下記の通り。
クリックして詳細を表示(ネタバレ注意!)
ケース1 園田乃梨子
49歳
大手文具メーカー課長。太ったことにより会社の同僚の接する態度が変ったり、夫や娘が自分をないがしろにしたり、疎遠だった義姉が近づいてきて嫌がらせのようなことをするようになったことに悩んでいたところに、母から大庭小萬里に相談することを提案される・・・
ケース2 錦小路小菊
18歳
没落した元華族の三女、大学生。パティシエになりたいという夢を持っているが、裕福な家に嫁ぐことだけを求める父によって反対されて、目的もなく大学に通っている。ある日、田中春子という友人ができ、「痩せたい」という小菊に春子は大庭小萬里の個別指導を受けることを提案する・・・
ケース3 吉田知也
32歳
商事会社に勤務。ある日、交通事故を起こし入院するが、気が付けば直近1年半の記憶を失っていた。自分が太っていることに驚くが、なぜそうなったのかを思い出せない。まわりの人が自分を見る目も気になる。そんな知也に母は大庭小萬里の本を読むように促す。そして、その1年半の間に知也に起きたことの秘密が明らかになっていく・・・
ケース4 前田悠太
10歳
小学生4年生、忙しい母と二人暮らし。学校では太っていることからイジメを受けている。ある日、資源ゴミの中から大庭小萬里の本を見つける。ひょんなことから親しくなった隣室の中学生の加奈の勧めで、大庭小萬里に相談することになる・・・
【感想】
「あなたの人生、片づけます」を読んで、この作者の考え方やものの見方に共感した部分があったので、次はということでこの作品を読んでみました。

「あなたの人生、片づけます」の主人公は片付け屋の大庭十萬里でしたが、この物語の主人公はダイエット指南の大庭小萬里で、大庭十萬里の妹です。この作品も、いろいろと考えさせてくれるいい小説でした。太った人を見ると、私もこの物語の登場人物のように、自己管理ができていないという一言でその人を評価していたように思います。その考えを自分にも当てはめて、太っていることは自己管理できていない人間のように感じていました。しかし、この小説では、体のゼイ肉よりも心のゼイ肉が問題なのだということを示してくれます。ゼイ肉とは余分の肉塊、こぶの類であり、心にある余分な考えを捨てることの方が大切だということを示してくれます。

ケース1
家族含めて周りの人たちの態度が変わったのは、太ったからではなく、笑顔がなくなり皆が心配していたり気を使っていたから。それを小萬里は「ブスとして生きる訓練をしなさい」という言葉で乃梨子に気づかせます。それはひとつの価値観に縛られずに、自分の姿やできる範囲のことを受け入れて、楽に輝いて生きなさいということです。

ケース2
親の子供に対する期待や型にはめようとする考え方が、子どもを抑え込んで肥満に向かわせていました。小萬里が、小菊に自立する心を植え付けていくことによって、生き方を見つけていきます。

ケース3
父親に反発しながらも、その父親の期待にこたえる生き方をしようとして問題を起こしてしまう青年の物語です。小萬里は、父親、母親、知也の心の問題をまとめて片付けます。父親に知也がなぜそうなったのかをきちんと理解させて、知也には、父親の期待から自分を解き放して自分の好みやしたいことを選択していく生き方に気づかせます。

ケース4
太っていることからイジメにあうという普通に存在するだろう問題を扱っています。忙しい母のために孤独だった悠太に、小萬里は、隣人の加奈と一緒に料理を教えたり、小萬里の母と一緒に犬の散歩をさせたり、疎遠である祖父母との関係を取り戻させたりして、悠太とその母親の中にあった心のこだわりを解きほぐしていきます。

その人がどう生きていくかが大切であり重要なのであり、外観はどうでもいいのだと教えてくれます。自分を好きになって楽しく生きることが大切なことで、外観はその結果なのです。外観が気に入らないとしても、それを卑屈に思ったり恥ずかしく感じることはなく、自信を持って自分のために人の目など気にせずに取り組めばいいのです。心の無駄な塊がなくなれば自分の生きる世界が変わるのだということを教えてくれます。

ケース2や3では、父親の立場として反省するところも多々ありました。「こうでなければいけない」という価値観で子供たちを押しつぶしたところもあったのかと愕然とします。それが、子どもたちの心のゼイ肉となっているならば、時間をかけてもそのゼイ肉を落としてほしいと願うばかりです。その前に私がもっときちんと変わらなければいけないわけですが。

人間として未熟なままだった私は、こういう考え方をもっと若い頃にきちんと学ぶべきでした。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。