2025年7月7日(月)開始 2025年7月12日(土)読了
作品情報
タイトル 殺戮にいたる病
著者 我孫子武丸
シリーズ
初刊出版社 講談社
レーベル
初刊発行日 1992年9月1日
書籍情報
出版社 講談社
レーベル 講談社文庫 あ-54-14
(改装版)
判型/ページ数 文庫判/368ページ
初版発行日 2017年10月13日
版数 第23刷
発行日 2022年6月21日
定価(本体) 700円
購入日 (次女より借用)
【あらすじ】
犯人は愛を語り、作家は真相を騙る・・・
犯人は、永遠の愛を得たいと思った――東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラー。その名は、蒲生稔! くり返される凌辱の果ての惨殺。恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈にえぐり出す。そして、読者の心臓を鷲掴みにする、衝撃の結末・・・

詳細は下記の通り。
クリックして詳細を表示(ネタバレ注意!)
第1の殺人 犠牲者:江藤佐智子(東洋文化大文学部1年)
犯行時期:昨年10月
犯行場所:豊島区東池袋 ホテル「パラディソ」
第2の殺人 犠牲者:加納えりか(17歳)
犯行時期:1月4日土曜日夜
犯行場所:新宿歌舞伎町 ホテル
第3の殺人 犠牲者:島木敏子(29歳・看護師)
犯行時期:2月3日月曜日夜
犯行場所:青山 ホテル
第4の殺人 犠牲者:田所真樹(24歳・会社員・三鷹市在住)
犯行時期:3月3日火曜日夜
犯行場所:横浜市中区本牧インター近く ホテル
殺人未遂 被害者:島木かおる
犯行時期:3月28日夜
犯行場所:青山 ホテル
第5の殺人 犠牲者:蒲生信一
犯行時期:3月28日夜
犯行場所:青山 ホテル
第6の殺人 犠牲者:蒲生容子
犯行時期:3月29日未明
犯行場所:蒲生宅
【感想】
次女がこの作品の結末が意外で面白いというので貸してくれました。

物語は、エピローグで蒲生稔が殺人で捕まり、6件の殺人と1件の殺人未遂を自白するというところから始まります。そして本編は、稔の視点、元刑事の樋口の視点、蒲生雅子の視点で、時系列は無視して描かれて行きます。樋口と雅子の視点が時間的に先行し、稔の犯罪行為が追いかけて語られるという構成です。

犯人は蒲生稔とわかっているにもかかわらず、最後にどういう意外性があるのかがまったくわからないまま、衝撃の最後の2行となります。それまでは、稔は大学生、母が雅子ということで話は進みますが、その結末を語られると、途中で持った違和感が間違っていなかったことがわかります。

その違和感は、
  その1:稔の視点による母は「稔さん」と呼ぶが、母である雅子視点では息子に対して名前を呼ばない。
  その2:稔が大学を休んだ時に、母に「休講にした」と言う。
  その3:残虐連続殺人被害者ひとり目(殺人としてはふたり目)のえりかが、稔をオジサンと呼ぶ。
なんとなくおかしいなと思いながらも、最後の結末は想像できませんでした。

この作品は、性行為中に相手を殺して快感を得る、死体に対して性行為を行う、死体の一部を切り取ってそれを自慰に使う、という猟奇的、病的な殺人事件となっており、その背景や精神面に注意を向けさせておいて、実は作者は読者を完全に欺いて楽しんでいたのではないかというような作品です。なので、作者に対してやられたという敗北感よりも呆気に取られるというような感じの結末でした。トリックに驚かされるとか意外な犯人だったというストーリー的な意外性ではなく、故意に読者を騙していたという意外性といった感じで、ちょっとモヤモヤ感の残る感じがありました。

しかし、騙されたということであれば、もう一度遡って読み直して矛盾がないかどうか確認したくなりましたし、そうかと納得してしまう話の構成の完璧さを感じて、作品としてはよく考えられていて面白い作品だなぁと感心してしまいました。例えば、雅子は息子を殺人犯と疑っていて息子を監視して尾行していたのに、なぜその息子が稔の殺人現場にいたのかというところから、実は息子は稔の犯罪に早い時期から気づいていて、稔のビデオを確認したり、庭に埋められたものを確認したり、稔の行動を監視し尾行していたのだとわかります。その行動が雅子の勘違いを生んでしまったということで、読者を騙すなら騙すなりにきちんと考えられているということもわかりました。

なお、性的表現がちょっと露骨で変質的なところがありますので、そこは人に薦める場合は要注意です。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。