2025年9月13日(土)鑑賞 イオンシネマ岡崎(スクリーン10 H-7)
2025年9月5日(金)公開 / 上映時間:123分 / 製作:2025年(日本=英=ポーランド) / 配給:ギャガ
【監督】 石川慶
【キャスト】
 緒方悦子:広瀬すず / 佐知子:二階堂ふみ / 1980年代の悦子:吉田羊 /
 ニキ:カミラ・アイコ / 藤原:柴田理恵 / 松田重夫:渡辺大知 / 万里子:鈴木碧桜 /
 緒方二郎:松下洸平 / 緒方誠二:三浦友和
【あらすじ】
第2次大戦後の1982年。日本人の母と英国人の父を持つニキ(カミラ・アイコ)は、大学を中退して作家を目指していた。執筆のため、異父姉の死から足が遠のいていた実家を訪ねた彼女は、長崎で原爆を経験した母の悦子(吉田羊)と数日間を共にする。ニキは、長崎で原爆を経験し戦後イギリスへ渡った母の半生を作品にしたいと考えて、母に当時(1952年)の話を聞かせてほしいと要望する。口を閉ざしてきた母は過去の記憶を語り始めるのだが、その話にはある嘘があった・・・
【感想】
2017年ノーベル文学賞作家「カズオ・イシグロ」の1982年発表の長編小説デビュー作品の映画化作品です。観たいけどどうしようかなと思っていた時に、長女から「これはお父さんの好みからすると観に行くんでしょ」と言われたことが後押しとなったので、ひとりで観てきました。

主役が広瀬すずと二階堂ふみということで、このふたりが凛としていて内面の強い女性を魅力的に演じていました。ふたり表面上の性格は異なりますが、雰囲気や根本的な性格が似ているなと思っていたら、実は佐知子は悦子の記憶の中の自分自身だったわけで、そういう意味ではとても考えられて演じられていたと思いました。ふたりともとても素晴らしい俳優さんであると再認識しました。

物語は1982年の悦子が娘のニキに対して話すことを、1952年の映像として交互に描かれるという形です。もともとの小説も難解みたいですが、この映画も人によって解釈が別れる難解な映画だと感じました。被爆した若い女性の不安、自分がやりたいことを実現できる世界(国)への憧れ、戦時教育の誤りと新たな世界への対応、それを1982年と1952年の両方の「嘘」の入った話で描かれるのでさらにわかり難くなっています。

ニキには異父姉がいて、その異父姉・景子が自殺をしているのですが、1982年の悦子が語る1952年の話には生れてきているはずの景子の存在が希薄です。その違和感を感じとったニキは母の嘘と真実に気付くわけです。また1952年の悦子も被爆に対して「嘘」をついています。しかし、その真実は思っていたほど衝撃的ではなく、意外性はそれほど感じません。この映画の魅力は、サスペンス要素ではないと思います。

広瀬すずと二階堂ふみ以外では、軍国主義的教育を貫いてきた三浦友和演じる緒方誠二とその息子・二郎(松下洸平)との確執や、教え子・松田(渡辺大知)が誠二に軍国主義的教育批判をぶつけ合うシーンは大きな見どころでした。

悦子の嘘に対して、もう少し感情を揺さぶる描き方をしてほしかったとは思いますが、時代を先取りして生きた女性の強さや生き方、世の中の戦争の傷跡、そんな中の人間描写という観点ではとても繊細に描かれていますし、演者も達者な人たちを揃えているので、重厚で魅力的な独特の世界観のある映画ではありました。
上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。
また、ネタバレの記述もありますので、ご注意ください。